GRIEF CARE
ペットロスとの向き合い方
ペットロスによる喪失感、悲しみ、罪悪感、眠れなさなどと向き合うために、よく見られる反応のセルフチェック、悲しみの経過、専門家に相談する目安と相談先を整理します。
この記事でわかること
- ペットロスは、大切な家族を失ったあとの自然な悲嘆反応として起こりえます。
- 悲しみ、罪悪感、怒り、無気力、睡眠や食欲の変化など、あらわれ方は人それぞれです。
- 無理に元気になろうとせず、書く、話す、休む、思い出に触れるなど、自分に合う方法を選べます。
- つらさが強いとき、自分や家族を傷つけたい気持ちがあるときは、公的な相談窓口につながってください。
ペットロスとは何か
ペットロスは、犬、猫、小動物など大切な存在を失ったあとに起こる喪失感や悲しみを指します。長く一緒に暮らした家族との別れであれば、心が大きく揺れるのは自然なことです。泣くこと、何も手につかないこと、部屋が急に静かに感じることを、弱さと考える必要はありません。
J-STAGEに掲載された論文では、ペットロスは対象喪失の一種で、親しい人との死別に近い悲嘆の過程をたどることがあると整理されています。一方で、周囲に理解されにくい孤独感や、治療選択・看取り方への罪悪感など、ペットとの別れに特有のつらさもあります。
起こりうる感情と身体の変化
悲しみだけでなく、後悔、怒り、ほっとした自分への戸惑い、何も感じられない感覚が出ることもあります。身体には、眠りにくい、食欲が落ちる、疲れやすい、頭痛や胃の重さを感じるなどの変化があらわれる場合があります。
これらは医療上の診断名ではありません。状態が続く、仕事や家事が極端に難しい、自分を責め続けてしまう、生活が回らないと感じるときは、医療機関や相談窓口を使ってください。国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトも、こころの健康が気になるときは身近な人や専門家、相談機関に相談することが大切だと案内しています。
- 悲しみや涙が急にこみ上げる
- あのとき別の選択をすればよかったと考え続ける
- 家の中の音や習慣が変わり、強い寂しさを感じる
- 眠り、食欲、集中力がいつもと違う
上のような反応は、大切な家族を失ったあとに多くの人が経験する自然な反応の範囲です。当てはまる項目が多くても、それ自体が「異常」というわけではありません。気になるときは、強さや期間、生活への支障の程度を目安にしてください(後述の「専門家・相談窓口を頼る目安」参照)。
悲しみの経過に『正しい順番』はない
ペットロスの悲しみは、「ショック → 否認 → 受容」のような決まった段階を順番に進むものではありません。実際には、落ち着いたと思った日の翌日にまた強い悲しみが戻る、というように行きつ戻りつしながら、少しずつ波が穏やかになっていくことが多いとされています。回復のスピードや形に「正解」はなく、人と比べる必要もありません。
命日、誕生日、季節の変わり目、散歩していた時間帯などに、ふいに悲しみが強くなることがあります。これは「記念日反応」と呼ばれる自然な反応で、悲しみがぶり返したのではなく、その子を大切に想っている証でもあります。無理に「もう立ち直らなければ」と急がず、その時々の気持ちに合わせて過ごして構いません。
自分でできる対処の選択肢
立ち直るための正しい順番はありません。今日は写真を見たい、明日は見られない、という揺れがあっても自然です。気持ちを言葉にする、日記に書く、ペットに手紙を書く、家族と好きだった仕草を話す、散歩していた道を少し歩くなど、できそうなものだけを選んでください。
思い出の品をすぐ片づける必要も、ずっと置き続ける必要もありません。つらさが強い日は、食事、睡眠、水分、短い休憩だけを優先してよい日です。自分を早く元に戻そうとするより、少しだけ負担を減らすことを考えてください。
無理に元気に見せなくても構いません
周囲に分かってもらえないと感じるときは、「今はペットのことを話すと涙が出る」「しばらく静かに過ごしたい」と短く伝えるだけでも十分です。
専門家・相談窓口を頼る目安
相談窓口を使うことは、悲しみを大げさにすることではありません。次のようなサインが続くときは、ひとりで抱えこまず、早めに人や専門家につながってください。
- 眠れない・夜中に何度も目が覚める日が続く
- 食べられない、または極端に体重が変化した
- 仕事・学校・家事に行けない、手につかない状態が続く
- 強い罪悪感や自分を責める気持ちから抜け出せない
- 強い孤独感が続き、誰とも話したくない・連絡を絶ってしまう
- お酒や薬に頼る量が増えている
- 自分や家族を傷つけたい、消えてしまいたいという気持ちがある
悲しみが長く・強く続くとき(遷延性悲嘆)
強い悲嘆が和らがないまま、目安として半年〜1年以上続き、日常生活に深刻な支障が出ている場合は、「複雑性悲嘆」「遷延性悲嘆症」と呼ばれる状態として、専門的な支援が回復の助けになることがあります(国際的な診断基準でも位置づけられています)。
「時間が経てば自然に治る」とは限らないため、つらさが長引くときは我慢を続けず、かかりつけ医に相談する、または心療内科・精神科を受診してください。受診は特別なことではなく、悲しみを軽くするための選択肢のひとつです。
厚生労働省「まもろうよこころ」には、よりそいホットライン、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤルなどが掲載されています。電話で話しづらい場合は、SNSやチャット相談の選択肢もあります。詳しくはペットロス相談窓口の探し方にまとめています。
子ども・高齢家族と一緒に向き合う視点
子どもには、年齢に合わせて、事実を短い言葉で伝えることが大切です。「寝ている」などの表現は、眠ることへの不安につながる場合があります。大人も悲しいと伝え、一緒に泣いたり、絵を描いたり、手紙を書いたりする時間を作ると、気持ちを置き去りにしにくくなります。
高齢の家族にとって、ペットは毎日のリズムそのものだったかもしれません。散歩、食事、声をかける習慣が急に失われると、生活の空白が大きくなります。無理に予定を埋めず、短い電話、食事の確認、通院や買い物の同行など、生活を支える声かけを続けてください。
強い悲しみ・自分や家族を傷つけたい気持ちがあるとき
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)に相談できます。厚生労働省「まもろうよこころ」には、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤル、SNS相談なども掲載されています。
今すぐ危ないと感じるときは、ひとりで耐えず、近くの人、救急、警察にも助けを求めてください。
自分や家族を傷つけたい気持ちが強いとき、すぐにご相談ください
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)。厚生労働省「まもろうよこころ」でも、電話・SNSなどの相談先を確認できます。
今この瞬間が危ないと感じる場合は、身近な人、救急、警察にも助けを求めてください。
よくある質問
ペットロスの悲しみはどのくらい続きますか?
個人差があります。数週間で日常が戻る人もいれば、半年、数年たってもふと涙が出る人もいます。悲しみが残ること自体を急いで否定する必要はありません。
仕事を休むべきでしょうか?
休むかどうかは、体調、仕事の内容、周囲の理解によって変わります。眠れない、食べられない、集中できない状態が続く場合は、主治医、産業医、職場の相談窓口に相談してください。
新しいペットを迎えるべきですか?
急ぐ必要はありません。迎えたい気持ちが自然に出てくる人もいれば、長く考える人もいます。家族の気持ちや生活環境が整ってから、ゆっくり考えても遅くありません。
罪悪感が消えません。
もっと早く気づけたのでは、別の治療を選べたのでは、という気持ちは珍しくありません。すぐに消そうとせず、できたこと、そばにいた時間、選んだ理由を書き出してみる方法があります。
子どもにはどう伝えればよいですか?
年齢に合った言葉で、亡くなった事実を隠しすぎずに伝えることが大切です。大人も悲しいと伝え、一緒に写真を見る、手紙を書くなど、気持ちを表せる時間を作ってください。
つらくて立ち直れません。どうすればよいですか?
悲しみは決まった段階を順番に進むものではなく、行きつ戻りつしながら少しずつ和らいでいくことが多いとされています。無理に元気になろうとせず、睡眠・食事・水分・短い休息を優先してよい時期です。眠れない・食べられない・生活が回らない状態が続く、強い罪悪感や孤独感が抜けない場合は、相談窓口や医療機関を頼ってください。
ペットロスで心療内科や精神科を受診してもよいですか?
受診して構いません。強い悲嘆が目安として半年〜1年以上続き、日常生活に深刻な支障が出ている場合は、複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)として専門的な支援が回復の助けになることがあります。まずはかかりつけ医に相談する、または心療内科・精神科を受診する方法があります。受診は悲しみを軽くするための選択肢のひとつで、特別なことではありません。